ハルシオンRB80リブリーザー
設計者が語る、そのユニークな設計意図

レインハート・ブカレイ、設計者

はじめに

ハルシオンRB80

 リブリーザーは新しいテクノロジーではありません。しかし長い年月をかけて、現在のリブリーザーへと進化してきました。18世紀には、すでに呼吸装置からの二酸化炭素の除去が試みられており、19世紀には、循環式の純酸素呼吸装置の特許が認可されています。現代のリブリーザーのデザインは、その原理を基本的に踏襲しています。

現代のリブリーザーに共通の基本構造は
 1.カウンターラング
 2.二酸化炭素(CO2)スクラバー
 3.ガス補給機構
 4.呼気/吸気用ホースに接続されたマウスピース

リブリーザーの歴史

ワクラスプリングスで使用された、
ハルシオン・リブリーザーの初期モデル

 1997年、WKPP探検プロジェクトの中から、探検レベルのリブリーザーが必要だという考え方が生まれました。ハルシオンのリブリーザーは、この要求への最初の回答でした。ガスの使用可能時間を延長すること。これがハルシオン・リブリーザーの最初の設計目的でした。このリブリーザーは比較的短時間(3時間まで)の探検ダイビングには適していましたが、エレクトロニクスを使用しないために、10時間を越える、さらに長時間のダイビングには、必ずしも最適の選択とは言えなかったのです。しかし、長時間のケーブダイビングでは、エレクトロニクスディスプレーを1分ごとにモニターするシステムは現実的ではありません。そこでハルシオン・リブリーザーには、呼吸が見え、聞こえ、感じられる、つまりガス補給が体感できる設計が採用され、さらに、緊急時に備える確実なベールアウト(帰還)システムが最初から設計に組み込まれました。長時間のケーブダイビングには大型のタンクが、オープンウォーターダイビングでは、小型のタンクが、状況に応じて使用できるようにしました。

設計者、レインハート・ブカレイ博士

 ハルシオンRB80リブリーザーの設計者、レインハート・ブカレイ博士は、ハルシオン・リブリーザーを熟知した設計者です。1998年以来博士自身も、ハルシオン・リブリーザーによるリブリーザーダイビングを続けています。1996年以来、ハルシオンと WKPPのプロジェクト監督のジョージ・アーヴィンと協力して、リブリーザーの改良に取り組み、さらにハルシオン・リブリーザーの長所を、すべて組み込んだ新しいコンセプトのリブリーザーの設計に着手しました。より高性能、よりコンパクトサイズ、よりシンプル構造、さらにユニークなベールアウト・システムが組み込まれた、使いやすいリブリーザーが、その設計目的でした。

目指した改良目標と条件

ハルシオンRB80リブリーザー

 第1の設計目標は、リブリーザーの劇的な小型化でした。左右のベールアウト用タンクの間に、リブリーザー本体が収まるサイズにする。現実には2台分をハルシオン・リブリーザーのフレームの中に収めるほどのコンパクト化でした。それを実現するには、以下の要求条件を解決が必要でした。

●リブリーザー全体の小型化には、スクラバーのサイズとカウンターラング容量を小型化が絶対条件でした。初期の計算では、スクラバーキャニスターとカウンターラングだけでリブリーザー全体ほどの大きさになり、実際には全体で2倍のサイズになってしまい、それの解決には、まったく新しい機構設計、つまり直線的な配置が必要になりました。

●RB80のスクラバーのサイズは、ハルシオン・リブリーザーのスーパースクラバーよりやや大きい程度が最低条件。

●RB80のスクラバーは、ハルシオン・リブリーザーのスーパースクラバーよりやや大きい程度が最低条件。

●ガスの使用可能時間の延長と同時に、オープンサーキットのベールアウト・システムを組み込むこと。

●効率的な自動排水機構。マウスピースを開けても、リブリーザーに浸水しない構造にすること。

●洗浄、点検が簡単なこと。

●パーツの少いシンプル構造にする。

ハルシオンRB80リブリーザーの詳細構造


ハルシオンRB80リブリーザーのマウスピース

 経済的なパーツを使った円筒型のデザインの採用が、結果的に非常に効率のよいリブリーザーを生むことになりました。ハルシオンRB80のスクラバーキャニスターには、ハルシオン・リブリーザーのスーパースクラバーより、吸収剤が30%多くはいります。吸収剤は、ソフォライム4−8メッシュ(2.5−5.0mm)の使用することにし、キャニスターの最適素材として、ポリプロピレンが選択されました。ガスがキャニスター内を縦軸方向に流れる、吸収剤が水分と接触しにくい機構が採用されました。

スクラバーの充填

 ユニークなカウンターラングが、ハルシオンRB80リブリーザー開発の核心です。最大呼吸量が要求されるときには、従来のシンプルなバッグでは、十分に対応できません。そこで、カウンターラングのベローズはダイバーの呼吸に合わせて縮む構造であること、しかも肺の動きと水圧に、正しく反応できる伸縮性が要求されました。これらの要求を満たすために、RB80には、特注のテフロンコーティング素材を使ったベローズが採用されました。このベローズ・カウンターラングは8リットル以上膨らむ能力を持ちますが、実際には、安全マージンをとって、約4リットル以上には機械的に膨らまないようにされています。ダイバーの通常換気量が4リットルを越えたときには、過剰分のガスが排出され、すぐに新鮮な補給ガスが回路内に放出されます。新設計のベローズによって、運動による大きな呼吸負荷への安全マージンが生まれました。

RB80カウンターラング

 このハルシオンRB80、セミクローズド・リブリーザーの排気比率は、1:10に設定されています。呼気のたびに満たされるガスと、吸気により過負荷になったガスを、内側ベローズがこの比率で排気します。排気は10ミリバール(100分の1気圧)にセットされた、過圧解放バルブが行います。このバルブは同時に回路全体の過圧解放バルブも兼ねています。内側ベローズが従来のカウンターラングの働きをします。補給ガスはオープンサーキット系統からも得られるので、理論的には、1:10を越える高比率、1:15、1:20の排気比率の採用が可能だと、設計段階では考えられていました。将来は排気比率を1:25まで高められると考えています。
 
 いくつもの理由から、RB80リブリーザーでは、ガスの深度補整機能は設計条件から外されました。深度補整を行うには、水面付近と深度下では、大きく違う排気比率を設定しなければならず、浅水域では排気が多くなりますが、浅水域でのガス深度補整は、適切な酸素分圧ガスに切り替えることで現実的に解決できます。このガス選択は、トレーニング・プログラムを通じて十分に習得できる技術です。すでに述べられたように、このリブリーザーのカウンターラングは、激しい運動負荷を想定した設計がなされています。

 RB80の実際のガスの延長効果は約8倍になります。設定された排気比率は1:10ですが、回路からの排気、ケーブダイビングでの上昇/下降プロフィール、マスククリアーなど呼吸以外のガス使用などのいろいろな理由から、理想の比率にはならないのです。

 補給ガスの回路内への放出と水分自動除去はスクラバーとカウンターラングの間で行われます。ガス補給は2つの放出バルブ(レギュレーター)が行います。2つのバルブはそれぞれ単独で十分なガス放出する能力をもっています。RB80でも、ハルシオン・リブリーザーで採用されている、同じガススイッチ・ブロックで、2つのバルブはそれぞれにコントロールします。このガススイッチ・ブロックには、2つのクイックコネクター、中圧セーフティーバルブ、さらにガス放出をコントロール用の2つのバルブ が組み込まれています。

 3時間を越えるようなダイブでは、リブリーザー内で結露が起きます。RB80では、この結露による水分は自動的に除去され、ハルシオンRB80のカウンターラングは、つねに乾燥状態が保たれます。カウンターラングにまで水が来ることはまずありませんが、カウンターラングに水が入ってもすぐに除去されます。RB80では、ダイバーがなにもしなくても、内側ベローズを通じて外部に排水されます。この排水機能は、水中でマウスピースが外せる、つねにマウスピースを閉じておかなくてもよいなど、ダイバーに非常に便利な機能です。マウスピースなどから入った水は、カウンターラングと吸収剤に触れずに回路内を流れます。ハルシオン・リブリーザーと同じベールアウト用オープンサーキットのマウスピースが、RB80リブリーザーにも使われています。

 ハルシオンRB80リブリーザーの分解は非常に簡単で、2つの止め金を外すだけで、吸収剤、ガス補給バルブ、排水機構が現れます。4つの大型ネジは簡単に外すことができ、カウンターラング、内側ベローズに直接手が届く構造です。カウンターラング、内側ベローズの表面、さらには内側面にも直接手が届くので、洗浄、点検作業が非常に簡単にできます。ハルシオンRB80という名前は、メーカー名のハルシオン、設計者のイニシャルRB、80サイズのアルミタンクの80を組み合わせて命名されました。

RB80はそのコンパクトさで
"Regundant"リブリーザーとして使用できます

 RB80本体部分自身の重量は9.5kg、スイッチブロックは1.5kg、オープンサーキットのベイルアウト用レギュレーターつきマウスピースホースが1.5kg、それに吸収剤とで、合計約15kgです。ベイルアウト用シリンダーとフレームはダイビング目的に合わせて選択します。オープンウォーターだけでなく、スイスアルプス、シャダンヌの深い洞窟、フランスのトロウマダムの浅い洞窟などなど、さまざまな環境で、ラインハルト・バカレイ博士とマイケル・ワルドブレナーによる低水温追加テストが行われました。フロリダのワクラでは、ジョージ・アーバインとジャッロド・ジャブロンスキーがケーブダイビングにRB80を使用しています。

レインハート・ブカレイ博士とマイケル・ワルドブレナー

 ハルシオンRB80リブリーザーのトレーニングはGUE-Global Underwater Explorersが独占的に担当しています。
RB80は世界記録を支えていますが、世界記録はみなさん、ご自分で…