リブリーザーのリスクを理解しておく

リブリーザーのリスク

 すべてのリブリーザーには、オープンサーキット・スクーバにはない、多くの潜在的リスクがあります。リブリーザーダイビングには、ときには死にいたる危険性があることを理解するためにもトレーニングが絶対に不可欠です。リブリーザーダイバーは絶対に自信過剰にならない注意が必要です。以下のリストは、リブリーザーダイビングの主なリスクです。

高炭酸血症

 リブリーザーはダイバーの呼気を循環させ再利用するので、代謝による二酸化炭素(CO2)を、ダイバーが再呼吸する前に除去しておかねばなりません。このCO2の除去がうまく行われないと、高炭酸血症が起きます。高炭酸血症の兆候と症状には、消化不良、錯乱、眠気、硬直、痙攣、意識喪失、頭痛などがあります。CO2は呼気がスクラバーを通るときに除去されます。ダイバーの呼気のCO2は回路内の水滴と結合し、スクラバーの化学剤で中和されて炭酸になります。ハルシオン・リブリーザーのスクラバーには、ソフノライムのような化学剤が詰められています。スクラバーを通過するときに、CO2分子は化学剤と結合し、呼気中のCO2を吸収します。この化学変化の結果、副産物の石灰、水分、熱が生まれます。

 高炭酸血症が厄介なのは、症状に気づくのに時間がかかることです。ダイバーは呼吸回路内のCO2の蓄積の原因となる技術的トラブルについて理解しておく必要があります。

CO2スクラバー不通過
 リブリーザーはガスを一方方向に流して、スクラバーを透過させます。そのためマウスピースの両端に一方弁が使われています。一方弁が故障すると、CO2を含んだガスが逆流する、あるいは、回路内スクラバーを通らないガスが溜ります。

CO2スクラバーの故障
 スクラバーの化学剤の使用可能時間には限界があり、使用限界を越えてダイビングを続けると、高炭酸血症が起きます。ダイビングの環境条件によって、スクラバーの使用可能時間は変化します。スクラバーがどれぐらいの時間、有効に働くのか、ダイバーは予測できなければなりません。低水温環境では、スクラバーの化学剤の使用可能時間は大きく低下します。水漏れや結露による、スクラバーへの浸水も、スクラバーの化学効果を低下させます。スクラバーの化学剤を何度も再利用する、あるいは化学剤の交換を怠ることが、スクラバーのトラブルのもっとも多い原因です。

スクラバーの化学剤の充填ミス
 CO2を除去するには、スクラバーの化学剤に十分に接触させることが必要です。ダイバーの呼気はスクラバーの化学剤の間を通っていきますが、化学剤に空洞や隙間があると、ガスは化学剤と十分な化学反応を起こさないまま通過します。スクラバーの効果を妨げる空洞や隙間ができないように化学剤を充填すること、化学剤が全体に均一に充填できているか、十分な確認が必要です。

浸水
 水分は触媒として炭酸をつくるのに必要ですが、多量の水がスクラバーに入ると、ガスがスクラバーを通過するときに、CO2が化学剤に十分に接触できません。ダイビング前にリブリーザーシステム全体のチェックが絶対に必要です。

低酸素症

 呼吸ガス中の酸素レベルが高すぎても、低すぎても生命を脅かす危険性があります。ほとんどのダイバーはナイトロックス・トレーニングで、酸素過剰のリスク(高酸素症)については学びますが、酸素不足(低酸素症)のリスクについては、あまり知らないのが普通です。セミクローズドサーキット・リブリーザーでは、呼吸ガスの最大酸素深度(MOD)を越えない限り、誤ったミックスガスに切り替えた場合を除けば、低酸素症にかかる危険はありません。低酸素症は体の機能を維持するための酸素を、動脈血を通じて細胞に十分に送れないときに起きます。

低酸素症の起き方

リブリーザーのトラブルによる低酸素症
●浅い深度域で、低酸素分圧のガスを接続
●ガス流量不足(特にドルフィンのようなリブリーザーで)
●不十分な排気または呼吸バッグの不良
●すべてのタイプのガス補給の不良

生理的理由による低酸素症
●呼吸器系のどこかに障害がある
●気胸その他の肺の障害による換気機能が減退。減圧症、喫煙、肺気腫などによる肺胞、毛細管の細胞膜あるいは毛細管細胞などの酸素交換機能の減退

呼吸ガスの酸素分圧があるレベル以下になると、低酸素症を起こす危険性があります。水面で呼吸する空気は、約21%の酸素が含まれた(ノルモキシック・ガスミクスチュア)混合ガスです。この場合、酸素分圧(PPO2)は約0.21大気圧(ATA)と表示します。

低酸素症のレベル

 低酸素はすべての細胞の機能を阻害します。脳細胞が特に危険にさらされます。低酸素症が起きると、人体は心拍を上げ血圧を上昇させ、できるだけ多くの血液を供給するために。血液循環量を増やして、できるだけ多くの酸素を供給して、酸素不足を補おうとします。面倒なのは、脳は低酸素の影響を強く受けるため、低酸素症の症状に気づく前に、ダイバーが意識を失う可能性があることです。以下は、低酸素症が起きる前によくある兆候です。ダイバー本人が自覚できるものも、自覚できない兆候も含まれています。

●集中力に欠ける(CCRのディスプレーが見られない)
●筋肉のコントロールができない
●微妙な作業ができない
●眠気、虚脱、失神
●うまく呼吸ができない

 呼吸ガスが無くなったことに気づいて、はじめてダイバーは対応ができます。オープンサーキット・スクーバのエア切れを、ダイバーははっきりと体感できます。これはオープンサーキットの利点の1つです。これと同じように警告してくれる警告機能があれば、リブリーザーにとっても有効な警告機能となります。ハルシオンのリブリーザーは、呼吸ガスのガス切れが起きたときに、呼吸を続けられないことを体感させ、ダイバーに警告をあたえます。この警告がないとダイバーは低酸素症が起きるまで、あるいは意識を失うまで、同じガスを繰り返し呼吸し続けます。

症状が起きたらどうする?

 高炭酸血症、低酸素症にかかったと感じたら、ダイバーはただちにオープンサーキットのバックアップシステムに切り替えて、症状が呼吸回路に中のガスが原因かどうかを確認します。ベイルアウト用ガスに切り換えることで、“真相究明チェック”は簡単にできます。補給ガスのトラブルが確認されたら、つねに携行している十分な量の、オープンサーキット・システムのバックアップ用ガスに切り替えます。